原題:長靴をはいた猫
英題:(多分外国公開されていない)
監督:矢吹公郎
公開:1969年
(著:hanea)
うーん。映画を沢山見る!と決めたけれども、どうせ沢山見るなら色々なジャンルの色々な映画をみたい。かといって今週は連休明けだし、あんまり気合を入れて名作・傑作の感想を長々と反芻するのも面倒臭い気がする。よし、たまには童心に帰って、童話でも見てみようかな。
…という「キネマ週報」始めてわずか4回目で随分中だるみ感溢れる理由で本作をチョイス。びっくりしったニャア!びっくりしったニャア!びっくりしったびっくりしったびっくりしったニャアアアアァァァ!!
本題。
本作はシャルル・ペローの童話を原作として制作された幼児向けアニメ作品。昔の東映では小学校の夏・冬・春休み時期に合わせ複数の幼児向け作品をまとめて劇場公開する、主に「東映◯◯まつり」と銘打った企画(?)があったそうで、本作はその中の1作にあたる。以降、「長猫シリーズ」は計3作品が制作された模様。その他の「東映◯◯まつり」の作品には花の子ルンルンやら一休さんやらアラレちゃんやらという有名なTVアニメ作品の劇場版の他、特撮ヒーローものの劇場版があったりして「まんが」という言葉が「子供向け」という意味合いを多分に含んで使用されているあたりに、「アニメ」が1ジャンルとして確立する前夜の面影を感じる事が出来、大変に趣深い。
物語は大まかには原作童話に沿った内容となっているものの、序盤は昔のディズニー映画のような子供向けミュージカル調、終盤は昔の宮崎アニメのようなアニメ冒険活劇調、間をトムとジェリーのようなオモシロおかしいギャグ展開でコント劇調に繋いでいくもので、妙な「ごった煮」感に終始戸惑う(なんかちょっと前のシーンと雰囲気が全然違うなあ…みたいな)。物語全体のラインがあって、よーし、この場面は俺がミュージカル調で作る!ならばおれはこの場面で爆笑をとってやろう!じゃあクライマックスは主人公が右へ左へ縦横無尽の大活劇にしよう!みたいに役割分担して作ったんじゃないかと思わせるようなツギハギな感じの作り。
なので物語の成り行きを楽しむよりは、その時々の場面場面に応じて、ミュージカルとして、コメディとして、冒険活劇として、見る側の姿勢もバラエティ豊かに楽しむのが最も素敵な楽しみ方だと思う。
出だしのスタッフロールに「ギャグ監修」という役職があった時点で笑ってしまったが(きっとギャグ界の大物の方なんだろう)、主題歌には井上ひさしの名が、スタッフロールには宮﨑駿の名が記されており、スタッフはギャグ界の、音楽界の、アニメ活劇界の、後に伝説となる方々がこれから意気盛んという時期に結集して作った「ごった煮」であった様子で、そう考えると随分ゴージャスなごった煮だったんだと思う。
登場人物は魔王が一番のお気に入りキャラクター。なんか不憫な役回りで少し可哀想になってしまうほど。子供向け作品に茶々を入れるのも野暮だけれど、魔王って言うほど悪いこともしてないし、残虐非道でもないのに終始敵視されて不憫でならない…。一応、王様の出したお姫様の婿の条件に全て当てはまって、条件面だけで言えば婿として申し分ないように見えるし、ちゃんと王様の前で立候補した上、実力も披露して3日間の猶予まで設けてお迎えに上がると求婚する紳士ぶり。そして…一人も家来居ないのに…大きな城で…たった一人でごちそう用意して姫が来るのを楽しみに待ってたんだ…!!(泣)。姫と対峙しては顔を真赤にして照れ、おだてられては自慢気に笑い、大切なドクロを奪われては憤慨し、誰よりも人間味溢れる、何か無骨でぶっきらぼうな親戚のおっさんみたいな悪役だった。終盤の大立ち回りも、自分の所有物(しかも命のように大切なもの)を奪われて破壊されようとしているのをたったひとりで必死に阻止しようとしている様がもう不憫で不憫で仕方なかった。その上ちゃんとギャグ要素にも絡み、悪役として悪役であろうと猛威を振るい、自分の正当性を主張することなく真正面から主人公一行に立ち向かう八面六臂の大活躍。どこか憎めない彼にも、穏やかな結末を用意して欲しかったなあ…。
本作の終盤はとにかく「ルパン3世 カリオストロの城」そのもの。
根拠となる情報源は無いけれども、本作がカリ城の土台になったのだろうと思われ、その意味ではアニメ界の記念碑的作品とも言える様子。
時代の流れと共に多くのアニメや映画の良作・傑作が並ぶ現在において、単品映画としてこの映画をお勧め出来るかと言われると正直迷ってしまうけれど、昔の「まんが」の雰囲気、きっとその当時は珍しかった大活劇、お父さんお母さんに映画へ連れて行ってもらう夏休み・冬休み…といった「公開当時の時代の雰囲気」に思いを馳せて見るのはとても楽しかった。僕の知らないいつかの、どこか牧歌的な記憶。
終わり。
(著:Dzi)
「びっくりしったニャア!」あぁ、もう可愛い。
今回も、背景やあらすじはhaneaに任せて…と。
haneaも触れているけど、これは「可愛い可愛いカリオストロの城」。
ラストはちょっと違うけどね。
まず、ちょっとだけ政治思想的な話をば。
この作品、脚本が井上ひさしなんだけど、この方ちょっと共産主義者的なんだよね。
(「新日本共産党宣言」を出版してたりする)
それもあってか、相続問題を揶揄したり、資産家をあまり良いキャラにしなかったりしている。
だからこそ、資産家であり、権力者である「魔王」を、行動原理に拠らず悪者として描いているんだと解釈している。
彼はあくまで紳士であり真摯だったのにね。(うまい!w)
絵柄について。
とにかく動物キャラが可愛いんだよね。好きな絵柄。ちょこまかとなめらかに動くし、日本のアニメ映画黎明期のものと考えると、ハイレベルなんじゃないかな?あまり詳しくは無いんだけど(笑)
これもあまり詳しくないので、直感的なものなんだけど、人物の絵柄と動物の絵柄のテイストがちょっと違う感じだよね?とても乱暴に言うと「藤子アニメ」と「ポポロクロイス(ゲーム)」が共存しているような・・・。まぁ、でもそれもある種の表現手法として、「好き」な部類かな。
各キャラのロールについて。
追手が迫る魅力ある主役キャラが居て、追手の中にはドジで可愛いヤツが居て、美しいヒロインと勇敢なヒーローへと変貌する準主役が居て…。
うん、やっぱりかなりカリオストロw主役の位置付けが違うけどね。
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ピエール =ルパン
ペロ =次元+五右衛門
殺し屋猫達 = 銭形のとっつぁん+警察達
ローザ姫 = クラリス
魔王ルシファ = 伯爵
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ちょっと強引かね(笑)
まぁでもそれくらいカリオストロに影響を与えているってことは確かだよね。
シーン描写のあれこれ。
後半がカリオストロなのはもう誰が見てもです。こっちが元だけどね。
前半部分の兄弟のやりとりは中々人間の汚い部分を軽快に描写していて割と好きなシーン。人間は目の前の金には素直になってしまうモノなのです(笑
あとは、姫へ求婚しにくる登場人物全てがフェアに挑んでいるところはとても良いよね。
あの魔王ルシファでさえもフェア(!)
そうなんだよ、魔王悪いことしてないんだよ。やはり前述の資産家への見方が色濃く出ているんかなぁ。これ、子供の時に見たら「資産家は悪であり、孤独である」っていうのをかなり強く印象づけられてしまう可能性あったなぁと。
また、魔王の感情を表情だけじゃなく、顔の色で表現する手法は分かりやすくて良いね。
当時はまだカラーテレビの普及率が13%程度だったので、映画ならでは感はあったんじゃなかろうかと推測。
所々ミュージカル調になるのはこの作品の特徴。大人も口ずさんでしまうくらいキャッチーな「びっくりしったニャア!」。大人も子供も一緒に楽しんでもらいたいという制作サイドの気持ちが伝わって来る。
総評としては…、
なんか、上手くまとめられないけども、単なる子供向けエンタテイメントの側面もありながら、大人な視点で見ると考えさせられるところがある、ハイブリッドで上質なアニメ作品なんじゃないかな。
いろいろああだこうだ言ってますが、純粋に楽しいアニメ映画でした!!
以上。
*****************「自由談義」*****************
(Dzi)なんか、カリオストロ連呼でごめん(笑)でも、礎になった作品であることは確かだから、どうしても気になってしまってね。しかし、46年前の作品なので、そこそこの古臭さは否めないにせよ、アニメーションの作り込みとかは結構レベル高く感じたんだが、どうなんだろうか?いかんせんアニメには疎いもので…。
全体を通して、シリアスな場面はあれど、ずっと楽しく観れたのは 画の可愛さのせいなのかね。ペロは魅力的な猫ちゃんだったね(笑)是非続編も観たくなってしまったわい。
あー俺らみたいなカリオストロから先に見ちゃった世代の感想って感じになったかもわからんねえ。きっと、長靴をはいた猫から先に見ていたらまた感想も違ってきたのかも。
なんか今のアニメはCGとか多用してていい感じに手抜きが出来るけど、昔のアニメは愚直にセル画をせっせと書いていたから、今よりもむしろ昔のアニメーションの方が滑らかに丁寧に動くんだって話を聞いた事がある。んで、もっと昔のディズニーのアニメとかはもう、どうやって作ったんだかわからない謎技術が多用されてたりするから、再現すら出来ないんだとさ。そういう意味では、今と昔でアニメーションは全然別物として見たほうが良いのかもしれない…。
そういえば、ペロの声も初めはピカチュウとかハム太郎みたいな甲高い声を想像してたから、わりと野太いおっさんの声で意外だった。いつの間にか、知らないうちにアニメといえばこう!みたいな先入観が頭に固着してるのかも。(hanea)
あー俺らみたいなカリオストロから先に見ちゃった世代の感想って感じになったかもわからんねえ。きっと、長靴をはいた猫から先に見ていたらまた感想も違ってきたのかも。
なんか今のアニメはCGとか多用してていい感じに手抜きが出来るけど、昔のアニメは愚直にセル画をせっせと書いていたから、今よりもむしろ昔のアニメーションの方が滑らかに丁寧に動くんだって話を聞いた事がある。んで、もっと昔のディズニーのアニメとかはもう、どうやって作ったんだかわからない謎技術が多用されてたりするから、再現すら出来ないんだとさ。そういう意味では、今と昔でアニメーションは全然別物として見たほうが良いのかもしれない…。
そういえば、ペロの声も初めはピカチュウとかハム太郎みたいな甲高い声を想像してたから、わりと野太いおっさんの声で意外だった。いつの間にか、知らないうちにアニメといえばこう!みたいな先入観が頭に固着してるのかも。(hanea)
***************** 次回 2015年10月第1週 お題作品 *****************
作品タイトル: 「ハリーとトント」(1974年)
監督:ポール・マザースキー
主演:アート・カーニー、トント(猫)
お、図らずも猫繋がり!
この映画はいわゆるロードムービー。
老人と猫を通して、人生とはなんぞやということを表現した映画。
というと、過剰なドラマティックさを期待するかもしれないけど、
ゆったりとした気持ちでみてくださいな。
主演:アート・カーニー、トント(猫)
お、図らずも猫繋がり!
この映画はいわゆるロードムービー。
老人と猫を通して、人生とはなんぞやということを表現した映画。
というと、過剰なドラマティックさを期待するかもしれないけど、
ゆったりとした気持ちでみてくださいな。

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